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Mon, 25 Jun 2007

みんな元気だから大丈夫

舞城王太郎『みんな元気。』読了。

3編収録の短編集。新潮社からは『阿修羅ガール』に続いて2冊目。何となく、講談社から出しているものと違って、意識して純文学やマジョリティを弄りまくっている感じがするのは、僕の気のせいだろうか。

『みんな元気。』。表題作で唯一の中編。舞台は府中。主人公の私(枇杷、小学6年生)が所属する一家である山口家には、姉(ゆり、6年生、私より11ヶ月上)、秀之(4年生)、朝(1年生)、父(星雄、工業英語翻訳家)、母(さとみ、皮膚科の医者)が居る。ある日、姉が眠っている間にベッドの上で浮いているところを発見し、朝も浮くという事実が発覚する。そして朝を攫うために竜巻と共に空を飛んで現れた杉山家。

私の独白で物語が進む。姉と恋愛対象が被る事、朝の代わりに山口家に置かれた杉山家の昭、杉山家を出た唯士、レズ、イトウタカコ連続死亡事件(飲み込まれる)、未来の可能性。

家族は偶然なのだろうか、どこかに必然があるのだろうか。選択はどこまで可能なんだろうか。選択によって得るものは、失うものは。

『Dead for Good』。舞台は調布。主人公の上村哲朗は、真性サディストの兼益伸介に虐げられ、障害を持つ。養護老人ホームで働きながら、南米から中東に移り虐殺を繰り返す兼益を殺す事を考えながら、恋愛をする。

『矢を止める五羽の梔鳥』。舞台は福井。主人公の桜谷晴久は山火事を見る事が好き。そして結び付けられようとする山火事と連続殺人。夢の描写が現実と結び付く。寂しい?

『みんな元気。』は私の独白の中で年齢が変わったり、可能性としての未来が提示されたり、それが明確な境無く突然変わるから驚く。空を飛ぶ人が居るという非現実の中で、物語の現実を見極める。『矢を止める五羽の梔鳥』も夢と現実をゴッチャにする。

相変わらず密度の高い文章の中で、どんどんフルネームのキャラクタが登場しては消え、再登場する。ここまで頻繁に出てこられると、他の物語と共通のキャラクタが居たとしてもメモしない限り気付かなさそうだ。

文庫版は単行本版を2分冊している。残りは『スクールアタック・シンドローム』にて。

舞城 王太郎 - みんな元気。 (新潮文庫 ま 29-2)

みんな元気。 (新潮文庫 ま 29-2)
舞城 王太郎